Amazon FireTV Stick 4K

3台目、スマートTV機器としては5台目。

... 以前のはみんな2015年に買ってるのか。。当時は各社からこの手のデバイスが次々と投入されていて、microconsoleという言葉もちょっとしたブームになっていた。現状ではApple TV+ がFireTVに投入されることが発表される等、ハードウェアの主戦場は既にスピーカーに移っており、TVは当時ほどの盛り上りを見せていない。

今回は普通にAmazonで購入。AmazonのデバイスAmazonで購入した場合アカウント紐付になるという説明があるが、今回はセール期間に購入したためか、手動でアカウントの登録作業をする必要があった。

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年々大型化している気がするAmazon Fire Stick。上が初代Stick(2014) 、下が今回購入したFireTV Stick 4K。初代はそもそも超クッソ激烈に熱暴走しやすくアプリのインストールやWebブラウズ等を行うと直ぐ熱暴走していた。

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今回のStick 4Kは流石に通常の使用範囲では熱暴走することはなかった。

初代のGPURaspberry Piと同じVideo Core 4、今回のStick 4KのGPUPowerVRになっている。初代FireTV Stickは既にディスコンなため、実は現状のFireTV(やAppleTV)は全てGLES 3.0以降を仮定できる。

FireTV Stck 4KのUIパフォーマンスは比較的良好で、特に初代Stickと比べると雲泥の差がある。

FireOS 5 vs FireOS 6

前回のFireTV(gen3)はスキップし、FireTV Cube(gen1)は日本での扱いが無いので、今回のFireTV Stick 4Kが手元のデバイスとしては最初のFireOS 6デバイスになった。

FireOS 5 は Androidで言うところの 5.1 Lollipop (API Level 22)に相当し、 FireOS 6 は Android で言うところの 8.1 Nougat (API Level 25) に相当する。基本的にFireOS6はFireOS5の後方互換となっているが:

といった絶妙な違いがある。

ホーム画面や設定UI等Amazon独自アプリはFireOS5デバイスとFireOS6デバイスで共有されており、初代FireTV StickとFireTV Stick 4Kでパフォーマンスは大きく違うものの 基本的に全く同じ UIが表示される。(もちろんデバイスのケーパビリティや地域に合わせた変更は行われる -- 手元ではアップデート前は日本未発売のFireTV Recastの設定項目が表示されていたが、アップデートで削除された)

まだ 4Kでない FireTV stickがFireOS5で販売されているので、FireOS5が絶滅したわけではない。

基盤バージョンの違いが一番不味い形で表われるのはDolby Digitalのサポートで、最初にJelly Beanベースでリリースされた初代FireTV / FireTV Stickを想定すると相当に複雑な処理が必要になってしまう( https://developer.amazon.com/ja/docs/fire-tv/dolby-integration-guidelines.html )。Amazonは、これらの旧世代機向けにExoPlayerの移植版を提供( https://github.com/amzn/exoplayer-amazon-port )することで移植コストの低減を図っている。

ゲーミング

Amazon FireTV gen2 は専用のゲームコントローラを同時に発売し、コントローラ側のヘッドホンサポートや専用ゲームの展開等それなりにゲームを推していた。しかし、2017年以降はこの傾向は失われてきた。専用のゲームプラットフォームであり、初代ゲームコントローラには専用ボタンまで存在した GameCircleは廃止 されているし、FireTVのパッケージでも一切ゲームへの言及は無い。過去のFireTVでは:

(初代FireTV stickのパッケージ)

簡単に使える

テレビに直接差し込んで、すぐに使い始められます。簡単な操作で映画、TV番組、アプリ、ゲームが見つかります。

(FireTV gen2のパッケージ)

快適なゲーム体験

アクションからカジュアルまで、人気のゲームが勢揃い。別売りのゲームコントローラーを追加すればゲームがより本格的に。

のようにゲームに言及していた。

Stick 4Kのゲーム対応状況は何とも言えない。聖剣伝説( https://www.amazon.co.jp/dp/B01CZKNQQM )は 非対応 、GLES2でも動作する脅威の互換性のアスファルト8( https://www.amazon.co.jp/dp/B00EQ0CKRQ )は当然の権利のように対応、Unity製のクロッシーロード( https://www.amazon.co.jp/dp/B00QW8TYWO )も当然対応。スクエア・エニックスAmazon AppStoreに積極的にゲームを提供しているが、ネイティブ動作のゲームでStick 4K対応のものはかなり少い。(FF12等、G-Clusterが展開するクラウドストリーミング版は相当な数があるものの。)

もっとも、Amazonがゲームから手を引いたわけではない。自身のゲームスタジオであるAmazon Game Studiosは現在はPCやコンソール向けにゲームを供給しており、Prime Videoコンテンツのゲーム化である The Grand Tour Game をリリースしている。

ちなみにFireTVは標準のWebブラウザとしてFirefoxを採用しており、このFirefoxゲームコントローラAPIWebGLもサポートしている (元々YouTube見せる用なんだからWebAPIの対応状況が良いのは当たり前な気もするが)。XboxOneのBluetooth対応コントローラも接続でき、ゲームコントローラとして使用できた。

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(スクリーンショットは初代FireTV StickにFireTVゲームコントローラとXboxOneコントローラの両方を無線接続したもの。 最近のFireTVはFireTVゲームコントローラに対応しない 。)

ただMansion Demo( https://www.babylonjs.com/demos/mansion/ )でも10fps出るかどうかというところなのであんまりゲームプラットフォームとして使うのは実用的ではないかも知れない。

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他のブラウザ選択肢としてはAmazon Silkが有り、タブレット版とは異なり単なるWebKitベースブラウザのようだ。

Unbox Experience

最近のFireTVは電源投入時の導入動画に続けて、アプリケーションのインストールを促す画面が挟まれるようになった。

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"趣味・教養"の欄には麻雀ゲームであるMaru-Jan、"その他おすすめ"には オンラインカジノトレバ (ストリーミングによるクレーンゲーム)、テトリス等がある。表向きにはゲームは推していないものの、セットアップ時にはインストールを促されるし、アプリのカテゴリにはゲーム自体は健在となっている。

Amazonのアカウントリンクはパスワードを手で入力する必要があり、なかなか辛いものになっている。Nexus Playerではワンタイムパスコード6桁の入力で済む( http://g.co/AndroidTV )ことを考えると。。ちなみに箱に載っているniconicoも同様で、OSKでパスワードをポチポチ打つ必要がある。

開発、PowerVR SDK

GPUとしてIMGのGE8300を搭載しているため、PowerVR SDKを使用してパフォーマンスカウンタ等の読取が可能になっている。ただし、 Vulkanは使用できないファイルシステムには libvulkan.so が有るものの /vendor 側にドライバが無く、正常にロードできないようだ。公称のOpenGLESバージョンは 3.2 。

SDKサンプルはそのままで正常にインストール / 起動できる。

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Graphics APIとしてOpenGL ESを含めておけばUnityのプロジェクトもそのまま実行でき、PVRHub経由で起動すればプロファイルも可能となっている。

FireTV伝統のオンスクリーンデバッグインターフェースである System XRay はなんと 完全に日本語化 され、項目の拡充が行われている。(同じ機能はFireOS5を採用するデバイスでも使用できる)

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System XRayはビデオCODECの状況を表示するデバッグ機能が有るなど、ストリーミングプレイヤとしての機能性にそれなりの配慮が見られる。

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基本的にハードウェアCODECを使用すると常に表示されるため、例えばMiracast受信を行ってもちゃんとCodec情報やFPSが表示される。MiracastはWi-Fi directであるため、NETが空欄で表示される。

FireTV Stick 4K は最後のTVデバイスになるか?

Stick 4KはそれなりのパフォーマンスをStick型のフォームファクタで実現した。有線LANの無いシステムはこれが最終形なのだろうか。

依然RokuやAppleは4Kプラットフォームを箱型で提供しているし、FireTV Cubeのようなハイブリッドデバイスには依然席は有るかもしれない。しかし、microconsoleに始まる"インタラクティブ10-feet screenプラットフォーム"としては、Stick 4Kの実現している内容が最終形に見える。

今のコンテンツプロバイダが提供する、HDR 4K + Dolby Atmosコンテンツ以上のスペックのコンテンツがストリーミングプロバイダから出てくることは考えづらいし、Stadiaのようなインタラクティブストリーミング技術のリーチは今後それなりの人口に達すると見られている。これが意味する所は、(ゲーム専用機のような例外を除いて、) スマートTVのスペックは限界に達した という点だろう。

その限界に達したスペックは、カメラ処理や他の需要によって進化を続ける電話のスペックを微妙に下回った位置にあるため、スマートTV向けのインタラクティブコンテンツの状況はあまり良い位置に居ないと言える。

逆に言えば、スマートTV向けのアプリケーションについては強い省力化の圧力があるため、そこを埋めるようなテクノロジには需要があるかもしれない。インタラクティブストリーミングに掛かるコストと、スマートTVネイティブアプリケーションのコストには広いギャップが有り、そこに"タダ乗り"するようなプラットフォームが今後登場するのではないだろうか。