プリチャンランドにおけるAIマスコットTier仮説
※ アニメ感想メモ
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- プリチャンはどこに向うか
キラッとプリ☆チャンのアニメは毎期でテイストを大きく変える方向に出たようで、営業的な効果はともかく非常に興味深い。1期のYouTuber立志伝、2期のVTuber+AIというトレンドを捉えた方向から、3期では急に多種多様な"マスコット"と呼ぶサポートAIの成長ストーリーに舵を切っている。
- https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1595915052
- TVアニメ『キラッとプリ☆チャン』シーズン2振り返り:大庭晋一郎(タカラトミーアーツ)×依田健(タツノコプロ)インタビュー
あれはAIであり別人格なんですけど、大きく考えると、虹ノ咲さん自身でもあるんですよね。自分で作り出したイマジナリーフレンドというか。
2期はサポートAIに支援されてVTuberデビューするといった示唆的な内容やらRezみたいな電脳空間での戦闘やら コミック百合姫でお勧めアニメになる などバラエティに富んだシナリオで非常に良い作品だったと思う。
3期は通常の展開であれば最終期に相当するため、過去のシリーズとの接続を意識したのかかなりファンタジー寄りの設定でAIを描写していて、それがとても興味深い内容になっている。
マスコットとルール/システム
3期で導入されたマスコット(プリキュアで言うところの妖精に相当する)は以下のような性質を持つ:
- プリチャンランド(= 遊園地)運営からアイドル1グループに1体支給される
- マクロスやキルミンずぅのように3段階の状態を持つ 0) たまご 1) プチマスコット (動物または物体モチーフの形状) 2) プリティーマスコット (人間型だが妖精形態のまま) 3) アイドルマスコット (人間と同じ背格好)
- 認定試験があり、不合格が続くとたまごに戻る
- 本人の能力や実世界との干渉能力で差別化されている
プリチャンは基本的にギャグアニメであるが、何故かマスコットの設定は比較的一貫した形で表現されている。
Tier仮説
おそらく、プリチャンにおける作劇上のマスコット設定は、その能力を階層化した形で管理しているのではないだろうか。これは ブレードランナーにおけるレプリカント(の型) とか 幽遊白書における 〜級妖怪 のようによく見られる手法ではあるが、そもそもストーリーの主軸とは思えないところで作り込まれている理由は現状謎と言える。
Tier3マスコット
一般のマスコットがここに分類される。
- プリチャンランド外部でも存在できる
- プリチャンランド外部では物理世界に干渉できない
- バーチャル〜 と銘打ったアイテムでお世話が可能(バーチャルフード、バーチャル薬等)
- 周囲の環境光源に影響されない
... 周囲の環境光源に影響されないというのが非常に用途が謎だが実際そのように描写されているので。。
マスコット認定試験は、(プリチャンランド内限定とは言え)現実世界に干渉する可能性のあるTier3マスコットの製造者責任を果たすためのものと考えられる。
(プリチャンでは名前が出ていないが、シリーズの伝統として"マスコットの墓場"という設定があり、このシリーズではマスコットに出来損ないがいることが普通に受け入れられている。)
Tier2マスコット
キラッCHU、メルパンのような主人公サイドのマスコットがここに分類される。
- アイドルマスコット形態に(外的要因で)変化できる
今のところこのポイントしかないが、今後Tier2マスコットを差別化させる要素が追加されると予想している。シナリオ上は担当アイドルとの絆なり何なりでアイドルマスコット形態に遷移できるように表現されているが、その実態を Tierの移動 と考えるほうが性質を纏めて表現できるのではないだろうか。
キラッCHUは2期のデザインパレットから移行したキャラクタとして描かれていて、純粋な3期キャラクタであるメルパンよりも劣った描写がされている。物理的な形質の描き方には差が無いものの、今後実装世代の違いによる差が設定されるかもしれない。
Tier1 / Tier0マスコット
ソルル・ルルナの両マスコットは明らかに他のマスコットと区別された形で表現されており、Tier1に位置付けられる。 今後 Tier1マスコットの存在理由と目的 が大きなテーマになるのではないかと思う。
- プリチャンランド外部でも物理世界に干渉できる
- アイドルマスコット形態に(必要に応じて)変化できる
- 周囲の環境光源に影響される
プリチャンランドのキャストマスターであるめが兄ぃは、プチマスコット等の形態を持たない特殊な Tier0 マスコット として位置付けられていると見られる。(人間である必要がない)
ポイントはソルルのパートナーである アリス・ペペロンチーノがTier0マスコットかどうか という点と言える。そのべらんめぇな出自や生活様式、バーチャル目薬を自分に使うといった他のキャラクタから際立った異常性があるため、それをマスコットの性質として処理してしまうのが簡単なのではないだろうか。
悪役のいない世界でどうドラマを作るか
一般的にアイドルは人を殺したりしないため、アイドルアニメは勧善懲悪になりづらい。当然勧善懲悪だけがドラマではないのでやりようは有るが、どうやって3年もアニメをやるのかというのは常に難題なのだろうと思う。
プリチャンのアニメは1期・2期については描く必然性のある現代的な内容をテーマとして選んで表現してきた。それが3期ではかなりストレートにキャラクターを推す方向になり、その内容も(女児アニメを3年続けた場合にお約束になる)育成要素を据えている。
この変化がなぜ必要だったのかはどうにも分からない。営業上の要請でマスコットキャラクタを多数出す必要があったとして、現実の問題をストーリーにすることは十分可能に思える。
1つの可能性としては、プリチャンの次の作品のためにテーマを移譲する必要があったためというのが考えられる。しかし、もう1つの可能性として 実は3期のテーマも現実世界の問題を反映している と考えられないだろうか。そして現状出ているシナリオでもっとも描かれそうなテーマが"プラットフォームによる個人と社会の支配"なのではないか。
プリチャンランドという比較的小さなプラットフォームを運営することで人間から信頼される術を身につけたTier2マスコットを作り出し、それにより自社の基盤を強化する。強化されたTier2マスコットがプラットフォーム外部まで影響を及ぼす点がシナリオ上の問題となり、それを解決するためにソルル・ルルナの両陣営が出会うエンディングとなるように思う。
プラットフォームという存在そのものは悪役ではないが、現実でもYouTubeやTwitter、Uber Eatsのようなプラットフォームが転嫁している社会的コストや個人間の問題があり、解決すべき課題を提示できるように見える。