非HRTF系バーチャルサラウンドのAstoundSoundがUnity Asset Storeで150ドル

(ネタ帳も今後はGoogleDocsで https://docs.google.com/spreadsheets/d/1eEYCoViNcBg3adz9CUUxkMDuZRHbz74Lz6HF67yfows/edit?usp=sharing )


最近、AstoundSoundがUnity Asset Storeで売っているのに気付いた。

おねだん150ドル!超お買い得(期間限定特価)!WWiseプラグインもこの値段で売ってよ! 他にもFMODやTrueAudio等に提供されている。再配布ライセンス形態はいまいち不明。
単なるステレオエンハンサ(expander)であればなんと20ドル。この手のソリューションとしてはかなり画期的な値段と言える。

非HRTF系プロセッサ

バーチャルサラウンドはHRTF(頭部伝達関数)、つまり、音の聞こえる方向によって耳介や体幹によるフィルタ効果が異なることを利用したものが主流となっている。対して、AstoundSoundは、非HRTF系サウンドプロセッシングを謳うバーチャルサラウンドシステム。この手の非HRTF系サウンドシステムはいくつか知られているが、インタラクティブなものは珍しい。
AstoundSoundは効果やデモの傾向もこれらに似ているが、こまかい性質は異なるように見える。

この手のシステムに共通なのは:

  • 特殊な録音環境を必要とする
  • スピーカーや片耳でも多少の効果を維持する

録音環境の特殊性については、otophonicsを採用した謎惑館のインタビューで多少語られている。

ただ、録音した成果物は、その日のうちに聞けないんです。

      • オトフォニクスを録音するマイクの周りに5.1chの環境を用意して鳴らす、といった手法も有り得そうですね

そうですね、その方法は実際に使っています。正確には通常の5chに加えて、頭の上の3chと、可動式の1chの9ch環境です。ストーリーの合間のイベントシーンなんかでは、この手法で録音したものを使用しています。

(謎惑館インタラクティブ性の必要なポイントではARNISのHRTF系サラウンドを使用している。)
AstoundSoundが、これら従来の非HRTF系システムと原理を共有しているかどうかは何ともいえない。いづれのシステムも原理を一切開示していない。ただ、少くとも、従来のシステムとは異なりインタラクティブサウンドをサポートしている点は大きく異なる。
しかし、AstoundSoundは従来の非HRTF系システムのデモとよく類似したデモを公開している:

(Youtubeのページで直接HD版を指定する方が良い結果を得られるかもしれない。)

AstoundSoundのミキシングシステム

WWiseのホワイトペーパーに多少の記述がある。

これによると、Auro3Dのようなheightチャンネルを持ったチャンネルベースのミキシングを行っているように見える。また、FAQページで処理の間引きを行うことが明記されている:

AstoundSound 3D RTI automatically limits the number of sound objects being processed based on 2 criteria: distance or volume. For example, when the criteria is set to volume, the loudest N number of sounds are processed with the non processed sounds using normal stereo panning. The max number of sounds (N) can be set (see the 3D RTI for further information.)

実際のデモ音源を試聴してみると、AstoundSoundは近接音に良い考察が有るように感じられる。このため、純粋なチャンネルベース手法ではなく、実際のモデリングパラメタが4段階のリングと天頂(Zenith)に制限されているだけで、さらに聴取距離によって何らかの処理を行っているのではないだろうか。