ゲーム表現とARIB規格/TR

TVゲーム風のコンテンツを制作するにあたっては、TV受像機やTVコンテンツの仕様に従って制作することが望ましいと考えられる。日本の放送機器の規格を準備しているのはARIBで、ARIBは規格/tech reportをWeb上に公開しているため、それを参考にできる。
(URLにenglishが入っているが規格票自体は日本語で書かれている)

これはいわゆる"地デジTV"(BS/CSも含む)の規格を定めたもので、各社のテレビはおおむねこの規格に沿って実装されている。
この規格には、いわゆるサラウンドのダウンミックス係数が含まれており(6.2 音声復号処理及び出力)、

  1. サラウンドのダウンミックスを1/√2掛け(= 0.707)で行う
  2. 疑似サラウンドのために逆チャンネルを減算することも可

としている。興味深いのは、この係数を選択した根拠が"付属−4 AAC デコーダにおけるダウンミックス処理について"で述べられており、下記のラウドネス規定の策定前はダウンミックス時に更に0.7掛けを行っていたことがわかる。

これは新しい規格で、Auro11.1のようなマルチチャンネル方式の音響方式を定めている。今のところ興味深い記述は無い。

このTRは、画面内の表示物について、セーフティーゾーンを定めている。TVは基本的にブラウン管の特性に由来する90%程度のオーバースキャン(= 拡大)を行う傾向にあるため、それを考慮した画面構成が可能なようにこのような規格を必要としている。
TRは3種類の表示範囲を規定している:

  1. 情報範囲(93%/97.5%) - "番組制作において画像情報の基準となる表示再現範囲をいう。"
  2. 重要情報範囲(90%/95%) - "スーパー文字、図形などの画像情報の表示再現範囲をいう。"
  3. 安全範囲(80%/なし) - "提供スーパー文字などの画像情報の表示再現範囲をいう。"

表示範囲にはCRTを考慮した現実的なセーフティーゾーンと、将来(当時)のフラットパネル時代を見越したターゲットセーフティーゾーンの2つが規定されている。このTRは、各社へのアンケートや標準化動向を含んでいて大変興味深い
表示内容のクラス分けを行っている。これは、提供スーパー等の表示はそもそも画面内に表示されることを保証しないと不味いため。情報範囲は、例えばドラマのようなコンテンツでも、画面内に表現物が収まるようにするための基準となる。

サラウンド番組を制作するにあたっての、視聴環境のガイドラインを規定している。検聴環境への興味深い指摘としては:

  1. "円周上でのスピーカ設置が困難な場合は、円周の内側に設置されるスピーカにディレイを入れて時間軸を補正する。"
  2. (サブウーファの設置について、)"メインチャンネルスピーカと位相を合わせること。特に後述するベースマネージメントを使用する場合はクロスオーバー周波数近辺の位相に注意する(解説1参照)。"
  3. (ベースマネジメントについて、)"多くのコンシューマ機器が...その機能を実装している。スタジオ再生におけるベースマネージメントの採用は、機器の特性や環境によって判断されるべきだが、第6章に示すようにベースマネージメントによる検聴を行えるような環境整備が望ましい。"

ここでも音量にはそれなりの紙巾を割いている。

ラウドネスについては規定の運用開始からかなり話題になっているのでWeb上でもそれなりに情報は見つかる。
このTRは-24LKFSというターゲットのみならず、実際の測定アルゴリズムやそのテスト信号にも言及しており参考になる。ARIBはWeb上でテスト信号の.wavも配布している( http://www.arib.or.jp/tyosakenkyu/kikaku_hoso/hoso_gijutsu_number.html )。