TVコンテンツとしてのゲームの難しさ

edit: 2ch強制が機能しない例を見つけられなかった。

テレビゲームはテレビに接続して遊ぶものなので、テレビの実装に表現は制約される。というわけで、それを正しく理解して運用することがプレーヤと製作者の双方にとって必要となっている。
...もちろんプレーヤは何も意識せずとも遊べるのが理想ではあるが。。MSや任天堂はTVベンダでなく、Sonyは自社製品であればHDMI一本で基本的に間違いがないようにデザインしているのでなかなかこの辺がフォローされない傾向にある。

映像表示

映像表示は見た目に出るので音声よりも状況は良い気がする。
(セーフゾーン)

クロワルールΣ(PS4版)は、PS4本体の画面サイズ設定に合わせて画面サイズを縮小させてしまっている。これを行うと多くのユーザの元では画面に黒枠が入ってしまう

ARIB TR-B4( http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/4-TR-B04v2_0.pdf )の通り、殆どの受像機では100%の表示範囲がデフォルトとして指定されている。しかし、PS4のデフォルトは90%程度となっていてこれを真面目に実装すると非常に間の悪い映像になってしまう。

ゲームを起動するとこのような調整画面になるが、これを画面全体を覆うように引き伸ばしてからゲームに進むこと。適当にやってしまったなら設定→サウンドとスクリーン→表示エリア設定( http://manuals.playstation.net/document/jp/ps4/settings/areasettings.html ) でやりなおすことができる。

XboxOneの素晴しいスクリーン調整ウィザードでは100%設定を前提にしている。キャプチャの不具合でちょっと見切れてしまっているが、緑枠は100 %でありこれ全体が見えるように調整しておけば良い。緑枠が収まらない場合でも、青枠は最低でも収めることを求めている。ちなみに、XboxOneは何故かリミテッドRGBを推奨している
ちなみに同じ問題はPCにも有る。PCの場合は100%になっていなければタスバー等がすぐ見切れるので問題には気付きやすい。PCをHDMI接続していて黒枠が出る場合はドライバ側のオーバースキャン設定を見直す必要があるかもしれない。

Avoid screen elements being clipped due to overscan and by incorporating a 10% margin on all sides of your layout.

Although the Amazon Fire TV platform provides a way for the user to adjust for television overscan in the settings, for the safest possible behavior we recommend that you avoid placing any of your app's UI elements within the outer 5% of any edge on the screen. The focused item and on-screen text, especially, should be fully within the inner 90% (the safe zone) of your user interface.

Android TVやAmazon FireTVでも90%をセーフゾーンとして規定している。このような規定はOUYAのような他のAndroidベースプラットフォームにも見られる。
(色管理)

... PS3は"自動"という選択肢を提供していなかったのでRGBフルレンジにしろという記事が大量に出回る結果になった。本来的にはこれはEDID(RGB quantization range)から自動設定できる*1が、世間的にはあまり信用されていないようだ。
Amazon Fire TVではRGB(235,235,235)以上の明さや暖色を避けさせている。これはRGBリミテッドレンジ / YUVディスプレイを気にしていると考えられる。(古くはDreamcastNTSC白を暗めのポイントに置いていたりなど、RGBと出力の不一致は伝統的な問題と言える)
ベンダはEDIDや選択した設定の表示機能を搭載すべきだ。妥当でないEDIDはそこら中にあるし、エンドユーザも結局のところ調整が必要なのかどうかがわからない。現状はデジタルディスプレイにおいてdot-by-dotが最も望ましい選択なのは疑いようが無い。

音声出力

音声出力は難易度が高い。
(フォーマット)
放送波という形でフォーマットが固定されている放送番組と異なり、ゲームはゲーム機の接続のバリエーションが非常に多いためエンドユーザの環境の予測が難しい。


例えばDolbyのページではXboxOneはDolby ProLogic IIのライセンシということになっているが、知る限りXboxOne(や360、初代)にDPL2のゲームは無い。(今やDolby Audioのようなソリューションを導入するとDPL2も付いてくるので重要なポイントでも無いが。。)
Dolbyは以前かなり詳細な設定ガイドを用意していたが、Webサイトをリニューアルした際に消してしまったようだ。ちなみにWiiUリニアPCMのみのサポートで一切のDolby技術がないのでこの表に載っていない。Wii/WiiUには光デジタル出力もない。
各種ゲーム機がサポートしている音声形式はWwiseのドキュメント( https://www.audiokinetic.com/library/2015.1_5418/?source=SDK&id=audio__output__platform.html )が詳しい。つまり、

PS4とXboxOneの出力機能は表面上全く同一となっている。これは単に光デジタルをサポートして全部入りにし、アナログを切り捨てるとこうなるというだけでもある。
ゲームの出力がこのようなフォーマットになっているということが判れば、

  1. テレビスピーカだけで他に音響機器が無い場合: HDMIで音が出るなら何もする必要が無い(PS4/XboxOne)。"主に使用する端子"にHDMIを選択する(PS4)
  2. サラウンド対応の音響機器を活用したい場合:
    1. テレビ側のARCを使用してHDMIで接続できるなら、Linear PCMを選ぶ。ビットストリームの選択はBD/DVDプレーヤでしか必要ない。
    2. 光デジタルで接続する必要があり、ゲームをサラウンドで遊びたいならDolby DigitalやDTSを選ぶ。PS3/4/Xbox360/Oneいづれも、ゲームの出力チャンネル数に応じて自動的にLPCMとDolby Digital/DTSを切り替えるような機能は無い。

(例外: 少くともPS4/XboxOneではビデオサービスやDVD映画のDolby SurroundをPro Logicで鑑賞したい場合は明示的に2chに切り替える必要がある。 - この点はアップデートで将来修正されるかもしれない) (edit)
ポイントは、ビットストリーム出力にはゲームのサラウンド出力をS/PDIFのためにエンコード出力する必要が有る場合にだけ意味が有るという点で、HDMIでは大抵のAVアンプやスピーカシステムがLPCMなサラウンドをサポートしているので使用する必要が無い。

あ、でもバトルフィールドとかCODとか音が死線を分けるゲームなら
ビットストリーム(生音)がいいかもしれんが(笑)

ゲームは直接ビットストリームを出力できない(除PS2)。PS3の設定UIはこのような誤解を産みやすい問題がいくつか有り、PS4では大分設定項目が整理され間違えづらくなった。が、オーディオについては"音声フォーマット(優先)"という形で設定項目はそのまま残っている(Dolby Digital等を選択してもHDMI機器側が対応していない場合は無視される)。
Wwiseのドキュメントに表われているように、ゲームは基本的にマルチチャンネルのLPCMとしてオーサリングされ、予めビットストリーム収録されるBD/DVDとは異なる。"ゲーム"と"ビデオサービス/BD/DVD"は設定項目を分けた方がわかりやすいのではないかと思う。
Android/iOSはサラウンドをほぼサポートしていない。このためあまり悩みどころは無い。Wwiseのようなオーディオミドルウェアもこれらのプラットフォームではステレオ以上の出力はサポートしない。
(オーサリング)
オーサリングも色々と問題がある。

本作の音域のレンジの広さが影響し、テレビ放送の「ラウドネス」という音響規定にはまりきらず、結果として1,2話では総音量を下げて放送することとなり、これについては多くの方からご不満の声をいただきました。

これはゲーム原作のアニメのケースだが、ラウドネスに関する考察はゲームに関してはまだまだ議論が始まったばかりで、今のところはゲーム毎に音量設定メニューを用意することにおちついている(そしてこれは機能する)。何をユーザ好みに調整させ、何をシステムwide設定とするかは難しいポイントと言える。
TVの場合はラウドネスの運用基準をARIB TR-B32( http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/4-TR-B32v1_2.pdf )で切り、運用している。ゲームでは2012年のCEDECで紹介されたところであり、

2013年にはWwiseやFMODのオーサリング環境にラウドネスメータが装備されている。
ラウドネス基準に適合できないがために総音量を下げるというのはよくある悲劇で、今回の事例でも視聴者に良い印象を与えていない。(ポケモンショック直後のアニメのように、)感覚に対する規制をよく実現するのは非常に難しく、まだノウハウも共有されていないところと言える。

*1:常識的なディスプレイは、出力装置の指示に従う