2015年はインタラクティブ3Dオーディオ元年となるか

CES 2015で、dtsはDolby Atmos対抗フォーマットであるDTS:Xを公開した。既にビットストリームを収録したBDを配布しており、eBayに大量に出品されている。

DTS:Xはソースコードなど、その仕様をオープンにしていることも特徴。劇場向けのMDA(マルチディメンションオーディオ)に加え、AVアンプやブルーレイディスクといったホーム用途への導入も進められているという。

ワーオ。(もっともDolby Atmosも各DSPベンダにライセンスされており、ここも同様の意味と考えられる。)
DTS:Xは従来DTS-UHD等と呼ばれており、dtsは3Dオーディオ技術を:Xのブランドに統合するようだ。ヤマハオンキヨー等の参入も同時に発表されている。
dtsの従来のフォーマット同様、家庭用はDolby設備での再生互換性に配慮したものになるだろう。
MDAはdtsやAuro、Barco等が推進するオブジェクトオーディオフォーマットで、SMPTEで標準化を目指している。(もちろんDolby Atmosも同様にSMPTEに提出されている) MDAは当初からオープンスタンダードを標榜しており、例えばフェアライト(あのフェアライト)からMDAのためのオーサリング環境である3DAWが出ている。

例えばゲームでは、デモ映像として「Call of Duty」の一部映像をDolby Atmos音声にしたコンテンツも聴くことができた。

Dolbyはブースでゲームに対する適用をデモしている。大手パブリッシャはゲームとこれらの3Dオーディオフォーマットの統合を検討していると伝えられており、2015年内には実際のインタラクティブデモが出るのではないかと(個人的には)予想している。

The upcoming Oculus Audio SDK uses Head-Related Transfer Function (HRTF) technology in conjunction with the Rift’s head tracking to achieve a sense of true 3D audio spatialization.

Oculusも、CES2015でOculus Audio SDKを発表している。VRゲーミングにとって3Dオーディオは欠かせない要素と言える。

標準化動向 / 製品化動向

MPEG(ISO)やSMPTEのような機関は既にオブジェクトベースオーディオの標準化に向けて動いているといわれている。

Still, while saying that that the development of an exact standard timeline can be "unpredictable," Ludé says so much progress has been made in recent months that he is hopeful a standard will be ready or close to ready for publishing before late 2015.

実際に2015年中に標準化されるかどうかは何とも言えないが、一つのマイルストーンになることは確かだろう。
DTS:X がどのくらいオープンスタンダードを目指しているのかは3月のロンチになってみないと判らないが、少くとも現状のAtmosとの差を埋めるためにはかなりアグレッシブな戦略を必要とすると考えられるので、DAWベンダ / ミドルウェアベンダ等とも積極的に組んでいくのではないだろうか。(MDAを推進しているAuro は既にWWiseにAuro 3Dプラグインを提供している。但しAuro 3D自体はチャネルベース) もっとも、先のCall of Dutyのデモのように、Dolbyも既にゲームベンダと接触している。
結果的にほぼ全てのプレーヤが両対応となったDTS音声/AC-3音声と異なり、Atmos vs. dts:Xがどのような立ち位置を占めるかは何とも言えない。BDの帯域を考えると、Atmos と dts:X両対応のコンテンツが出続けるとは考えづらいので、dts:Xの採用には現状かなりの覚悟が要求されるように見える。
もっとも、dtsはdts Headphone:Xのようなコンシューマ向けの製品をアグレッシブに投入しつづけているので、dts:Xについても同様の展開を期待している。
Atmosは去年9月のロンチ以降、まだいわゆる話題作をAtmosフォーマットのBDとしてリリースできていない。Blu-Ray 3DでのアバターがしばらくPanasonic限定で一般に提供されなかったように、継続的に作品がリリースされるような状況にならないと厳しいものが有る。
... というわけで、個人的には2015年の3Dオーディオはホームシアター"以外"での展開が注目される時期に有るのかなと考えている。ここで挙げたもの以外にも、AtmosのDolby Digital Plusでの配信等様々な展開が控えている。