インテルとプロセスルール・マーケティング

インテルはどこよりも早く14nmに進むようだ。おそらくインテルは今後より盛んにプロセスルール・マーケティングを行う、つまり、プロセスルールでの優位性を訴えるさまざまな策を執るだろう。
しかし、インテルが数字で先行するのはこれが初めてでは無い。昔インテルは"メガヘルツ・マーケティング"をしていた。

Intelと数字

Intelが数字を推すとあまりいい結果を招かないような気がする。

  • iCOMP Index

インテルは昔iCOMP Indexと呼ばれる"あいまいな"ベンチマークグラフをCPU売り場の横に貼っていた。もちろん、あいまいに重み付けられたベンチマークは役に立たないので市場の反応も今ひとつだった。(すくなくとも、Windowsのexperience indexのように成功はしなかった)

NetBurst MAのように、クロックの向上に有利なアーキテクチャを押したことは有ったが、結局Intelはこの方向性を捨てている。競合他社は逆に"クロックの高さが性能の高さではない"というマーケティングを盛んに行い、"megahertz myth"のような印象的なものもあった。

Larrabeeは、競合他社のCPUよりも長い512bit幅の演算を可能にしていたが、結局このチップはリリースされなかった。

プロセスルール・マーケティングを成功させるために

Intelはプロセスルール・マーケティングを成功させなければならない。
もちろん、Intel半導体製造技術の面では非常に優位に立っている。しかし、それでもプロセスルール・マーケティングを阻むいくつかの懸念がある。

  • プロセサはもはやメインパーツでない

いくつかの調査によれば(e.g. https://db.usenix.org/events/usenix10/tech/full_papers/Carroll.pdf )、いわゆるスマートフォンの消費電力でCPUの占める割合は20%程度しかない。一般に無線が多くの電力を消費し、処理がアイドル状態でもディスプレイの消費する電力は変わらない。
CPUが消費電力に占める割合は今後も低下していく可能性が高い。端末の高解像度化によってグラフィックスが消費する電力は今後も向上が見込まれるが、Intelは自分が作るチップに仕事を引き込まなければならない。つまり :

  • パーツはもはやメインビジネスでない

平たく言えばこうなる。
Intelの行う新セグメント提案は殆ど当たっていない。Netbookブームも一段落した感がある。AndroidなCEはまだ結果が出ていないが、ARMとの競争という面ではあまり魅力のある提案でない。とにかく、何かIntelのチップを拡販するようなムーブメントを作らなければ、せっかくの14nmプロセスもAMDを潰す程度にしか役に立たないだろう。
もちろん、ムーブメントが向こうからやってくるのを待つという方法もある。以前ARMなNetbookを売るのにはWindowsが要るというエントリを書いたけど( http://d.hatena.ne.jp/mjt/20090617/p1 )、実際今ARMにはWindowsが来ている。