夢の達成状況(回答編) / 歴史の変えかた

さて、2011年になった。前回( http://d.hatena.ne.jp/mjt/20080830/p1 )は2008年だった。

現状としては :

というわけで、当ったり外れたりという状況はかわらず。
トランジスタ数がほぼ正解なのが興味深い。ムーアの本家だけある。HDDサイズも正解と言える。
個人的には"プロプライエタリなソフトウェアが隆盛を極める"と予想していた。これはAndroidの台頭でそれなりに外れた。もっとも、オープンソースデスクトップという意味では後退しているのは事実ではないだろうか。
また、プロプライエタリコンパイラによってソフトウェアが支配されるという予想も微妙な状況になっている。nVidiaATIは自社アーキテクチャ向けのコンパイラの多くをLLVMの形で公開する(ATIはまだだが予定はしている)。
特にLLVMは2008年から2010年に掛けて、特異点と言って良い成長を遂げたように感じられる。LinuxがOSをゴミのような値段にしたのと同様に、LLVMはコンピュータアーキテクチャをゴミのような値段にする可能性を秘めている。
従来、Cコンパイラを作るというのは非常に限られた企業にしかできない事だった。EDGのような"Cコンパイラキット"は非常に高価で、大学のresercherを除けば、一般大衆には手にすることはできなかった。
しかし、今やLLVM+Clangで、誰でも自分のプロセサのためにCコンパイラを作ることができる。
Linuxは過去にOSの分野において同じことをやった。"新しいコンピュータを作ったけど、OSが無いのでただの箱"ということはなくなった。(BSDはこの分野にとってはLinuxほどは目立てなかったようだ)
これを可能にしたのはコンピューティングリソースの成長だろう。昔はLinuxが載るほどのコンピュータは安くはなかった。しかし今ではゴミのような値段である。
LLVM+Clangは、"新しいコンピュータを作ったけど、コンパイラが無いのでただの箱"ということをなくした。(gccはこの分野にとって。。。BSDよりは存在感が有ったかもしれないが、少くとも今のLLVMの地位を占めることはできていないだろう。)
これも可能にしたのはコンピューティングリソースの成長だろう。今や非常に多くのメモリをチップ中に集積できるので、GPUさえも"C言語フレンドリ"にすることができる。
このように、Linuxが可能にしたイノベーションと、LLVMが可能にしたイノベーションはよく相似している。唯一違うのはライセンスで、GPLLinuxに対してBSDLなBSDだが、GPLgccとBSDLなLLVMでは対応が逆になっている。

歴史の変えかた

というわけで、"何かを置き換える一般大衆向けのもの"が歴史を変えているように思える。
LinuxLLVMも、元はリサーチプロジェクトであり、非常に無謀なものを置き換えてきた。つまり、LinuxにとってのUNIXBSDであり、LLVM+ClangにとってのEDGとgcc
次に置き換えられるべきものは何だろうか。個人的にはARMとx86だと考えている。有名なWebサービスを2つ並べて考えるのも良いだろう。
空気のように当たり前に存在している、"誰も気付いていない不自由"に気付くことが必要とされている。90年代初頭なら、少くともトイレで音楽を再生するためにUNIXを使おうというアイデアは一般的ではなかった。