キラッとプリ☆チャン はどうなるのか
- http://d.hatena.ne.jp/mjt/20180324/p1
- prev: プリパラ オールアイドルパーフェクトステージ (NS, 1.0.0)
Switch版のプリパラを速攻で買ったのは、1.0.0がヤバいというだけでなく、これが初のキラッとプリ☆チャンコンテンツであるという理由もある。
来週からはアニメ等の展開が始まってしまうのでゼロ付近から予測を書ける最後のチャンスということで。。答え合せは来年。
プリパラとは
"プリパラ"は、簡単には"ガチャ要素のあるアイドルゲームを女児向けアーケード筐体にしたもの"と要約できる。基本的にメディアミックス前提で設計されアニメ等も放映されている。収集対象はアイドル自体ではなく、自分の分身である"マイキャラ"に着せるコーデ(衣装)となる。通常は4スロットあるため最低でも400円(ボトムスとトップスの複合アイテムであるワンピースを使う場合は3スロットになるため300円)掛かる。ただし収集した衣装は何度でも再使用可能なので1プレイあたりの最低コストは100円になる。
ガチャなので排出されるコーデ(衣装)はランダムであり、当初は自由に貸し借りする事さえできなかった。このように厳しい仕様でも400万IDを超えるヒットになっている。仕様上複数キャラクタの同時進行が非常に容易なため単純にプレイ人口と考えることはできないが、単にアーケードゲームとして見ても相当なヒットと言える。
我々大人は無限に課金して高レアリティのコーデを集めることができるわけで、逆に低レアリティ、かつコーデの揃わない状態でどういうプレイになるかをSwitch版で試してみた。最高レアリティの衣装は4000点を超えるが、動画では全て3000点未満にしている:
...その辺の小学生かよ。実際には2年目以降では200円でフルコーデが揃うドリームシアターが実装されたり、3年目で自由に衣装を貸し借り出来るようになる等敷居を下げる方向に向かっては行ったが。。初回のみ自動的に適当なコーデが選ばれるが、以降のプレイでは相当額の課金をしないと公式サイトのイメージのようなプレーはできない。(ゲームではアニメキャラクタも選択できるが、その衣装は別途収集の必要がある。)
基本的にプリパラは、"ムシキング"→"オシャレ魔女ラブandベリー"(いずれもセガ)の流れを組む女児向けのアーケードゲームで、新開発のプリンタ筐体(プリチケ筐体)によるビジュアルコミュニケーション要素を最大の特徴とする。大人がtwitterなりなんなりにスクリーンショットをアップロードするのを、印字されるカードで代行している。
- https://twitter.com/SHINOHBA/status/978682743180574720
- 企画/プロデューサ大庭氏のツイート - 氏のツイートはかなりオープンに企画経緯を語るものがあってすごい
- https://www.animatetimes.com/tag/details.php?id=4868
- アニメイトタイムズの楽曲制作/出演陣インタビュー連載
印刷された「プリチケ」は、折ることで、自分のアイドル・マイキャラの服装の情報、コーデが記録された「マイチケ」と、交換することで自分のマイキャラがほかの子のライブに出演することのできる「トモチケ」に分かれる。
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/press_120131_Pretty.pdf / http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/press_130122_pretty.pdf
- プリパラの前作プリティーリズムのプレスリリース(比較用)
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/puritike.pdf
- プリチケ筐体発表時のプレスリリース - 当初はブキガミ(男児向)との同時展開だったが、ブキガミは早期に終了し一部筐体はプリパラにコンバートされた
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/puripara.pdf
- プリパラ発表時のプレスリリース
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/R_pripara10.pdf
- プリパラ好調を伝えるプレスリリース1 - ファッション要素はこれを最後に急速にフェードアウトしていくことになる
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/R_pripara100LIVE.pdf
- プリパラ好調を伝えるプレスリリース2 - トモチケ交換ボードの公式化を伝えている
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/R_pripara200Re.pdf
- プリパラ好調を伝えるプレスリリース3 - "また『プリパラ』がメインターゲットとしている6歳から9歳の女児に換算すると、全員がユーザーということになります。(当社調べ)" という異常にテンションの高いフレーズが話題になった (ちなみに別のプレスリリースではバルセロナ市民に換算している http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/R_Laala1Year.pdf )
プリパラの素晴しい点は"み〜んなトモダチ、み〜んなアイドル"という一貫したコンセプトを実現しつづけた点で、プレスリリースでは
“普段は普通の私でもキラキラのアイドルに変身できる!”という女の子の永遠の憧れをかなえるコンテンツです。
のように語りつつ、男の娘アイドルに多数の男性ファンを付けるなど実績を残した。個人的にはプリパラは(日本のベンダによる)アニメ・クリエイティブの青春と言って過言でない成功を収めたと評価していて、次世代のコンテンツであるプリ☆チャンがこれを超えるのは非常に難しい問題になると感じている。
勝算がわからないプリ☆チャン
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/company/pdf/R_Prichan.pdf
- 発表時のプレスリリース
- http://www.takaratomy-arts.co.jp/specials/prichan/
- 公式
- http://gamebiz.jp/?p=202494
- 『キラッとプリ☆チャン』は『プリパラ』からどう変わる? SNS要素を本格導入した「フォロチケ」 『プリパラ』のマイキャラとコーデが引継可能に - 発表会のレポート
キラッとプリ☆チャンは、前作プリパラのプラットフォームを継承しつつゲームシステムを刷新したコンテンツとなっている。システム上は前作プリパラからの正当進化と言って良い内容で、
- ネットワーク機能の強化。前作では他人のゲームにマイキャラが出演した場合に、そのカウントが表示されるだけだった。本作では地域等を含めたより詳細なアナリティクスやレポートを含むようになりネットワーク中でのプレイ動向を知ることができるようになった。
- 印刷機能の強化。なんとプリンタを追加した。。
- 演出の強化。プレイ中にメッセージ性のあるパートは、プリパラではランダムに選択される"メイキングドラマ"が1度あるだけだったが、おそらく、他の演出(ランウェイ/メンバーアピール)を置き代える形で3度に増やされた。
... のようにゲームがかなり強化されている。
が、そもそも現実にできることのゲーム化を子ども向けに展開してヒットさせるのは非常に難しい。現実のSNSは子ども向けにパッケージはされていないものの、ゲームでやらなくても実際にやれば良いというポイントがどうしても出てきてしまう。
ポケモンが現実の虫取り遊びをパッケージしてゲームにしたように、おそらく、プリ☆チャンもポケモンにおける"対戦"のように現実では難しいものを何か提供するのではないかと思うが、それが見えてこない。スーベニアとしてのカードの魅力、定評のあるキャラクタやコーデや楽曲の品質、店舗大会のようなローカルネットワーク、..? とにかく、プリ☆チャンの企画の勝算として、何か現実では難しい内容を持っているはずで、それが気になっている。
ちなみにアニメの主人公はプリパラの小学生からプリ☆チャンでは中学生に変更している。先のインタビューで、
小さい子にとって、小学生と中学生の差は大きいですよね。その成長の部分がキャラクター性に影響を与えてしまうと各キャラクターの個性や魅力をスポイルするのではないかと思いました。まあ、もともと年を取らせる必要はあったのかなって話にもなりましたが(笑)。議論を重ねに重ねた結果、やはり小学生のらぁらが「かしこまっ!」と言いながら、年上の子を引っ張っていくのが『プリパラ』なんです。
としていて、この後のアニメではシナリオにおける小学生の比重が高まったり(神アイドル編)、そもそも主人公チーム全員を小学生にしたり(アイドルタイム編)と振っていたのを大きく揺り戻している。
現状、プリパラからは別のものを提供しようという意思は感じるものの、コアのコンセプトを "認められる満足感" という外部観察できないものに据えてしまっている。このため、そこに至るまでの過程が欠落しているように感じられ、プリパラの "アイドルになれるゲーム" というコンセプトの解りやすさから比べると大分距離がある。
これら各種の不連続な変化は原点回帰によるクリエイティブ規模の縮小を狙っているのではないかと思う。プリパラを現実に再現する事業、つまり、声優ミュージカルをやり、リアル店舗を何店舗も構え、ライブも展開するような多数のリスクを抱えた構造を一旦リセットしてコンセプトに共感する仲間を増やす時期を取っているように見える。前身のプリティーリズムがリカちゃんの文法を採用していてプリパラではそこから離れたように、プリ☆チャンでもプリパラの文法から離れる必要があったのではないだろうか。
展開の予測
プリ☆チャンのアニメ/ゲーム投入は4月で、これは準備期間を経て7月に投入されたプリパラに比べると相当な垂直立ち上げになっている。今回は筐体の刷新等も無いためプリパラのようなスタートダッシュは狙わず、定期的に話題を提供して都度新規プレイヤを獲得する方針(2年目以降に必要なモメンタムを1年掛けて獲得する)に見える。
間違いなくVTuber類はシナリオに出てくるだろうと言える。プリパラ時代もボーカロイドを模したボーカルドールが初期のシナリオで重要な役割を演じ、後のシリーズの根幹設定としても女神/精霊の形で入っている。問題は人間のYouTuberに比べてターゲット層での認知が弱いのと投入タイミングが難しいところで、文化的にいろいろ出揃った今のタイミングからデザインを詰めて半年後〜つまり年末とかになってしまう。これはモチーフに選んだ "自分発信" の構造上の問題で、プリパラのように"重い"クリエイティブで(現状の自分発信という面で大きな比重を占めている)ミームの変化に付いていくのは非常に難しい。
(プリパラの展開は楽曲やアニメ、製品のリンクなど事前に事業計画を用意する必要があるもので占められている。このため、一般的なソーシャルゲームのような短いスパンでアップデートする構造を持てない。ただ、事前のコラボ計画を要求するのではなく筐体でJANコードをスキャンさせてリンクするまたは画像認識等の手法でコラボを後付けできる可能性はある。)
何か現実に"やってみた"できる項目を用意する必要がある。たぶんいくつか偉業(実績/トロフィー)を用意してそれを実際のプレイヤに課すだろう。例えば、プリパラにおけるご当地アイテムのように店舗限定要素を用意し、東京のプレイヤに"広島県で人気上昇中!"のように告知した上で実際に出向かせて特典を与える等。ターゲット層には難しくても、そのフォロワーにはかなりの割合で大人が含まれるので実際にやるのが0.1 %未満でも十分と言える。プリパラにはプレーヤーランクが存在し、アニメでもその最高ランクである"神アイドル"を目指すのが当初のストーリー根幹とされたが、実際のゲームでは累積スコアで決定される廃課金プレーヤという意味合いでしかなかった。実績システムはその点を補強できる。アニメやライブなど現実のイベントもフォローできるようにする可能性がある。実績システムよりも手間は掛かるが。。
筐体外でのタッチポイントを増やす必要が有るが...良い場所が無い。チャットボットやスマートスピーカ類。。?プリチケの優秀な点はそれ自体がタッチポイントであることで、デジタルデバイスには置き代えづらい。アニメキャストが他のプレーヤを品評する番組を制作する等ここに関してはコストを掛けるしか無いんじゃないだろうか。。プリパズや海外で展開しているようなスマホアプリ類は正直キーになるような可能性を感じない。祖父祖母世代が応援できるような仕組は有っても良いと思うがリスクに見合うかは何とも言えない。
新規に導入された会員証に加えて、ドリームシアター相当のライブでチーム証を発行するだろう。会員証は何度も使用されるのでそこにプレミアムを載せることは価値が高いし、そもそもペアライブで既に相当するもの(= ペアプリチケ)を発行している。通常のプレイで作られるephemeralなチームとの差別化は悩ましいし、チームチャンネルのようなものを作らせてもゲームデザインを難しくするだけなので何か別の形で絆を感じさせるものを用意すると思う。例えばマイルームを用意してそこに招待する等。
おもちゃ展開は。。この内容でマイク売るとも思えないので。。マスコット一切無しはシリーズの過去に例が無いのでどこかのタイミングで出すのかもしれないが。。(プリパラと違いリズムゲームシーンではマイクを持たなくなった。)
アニメの方はそれこそ日記のようなどうでも良い内容から宇宙創成まで大小さまざまなスケールの"やってみた"が登場するのではないだろうか。...シリーズ通してチアリーダー常に出てるなという気はしなくもないが、そこは作品のカラーということで残したのだろう。キャラクタは色シリーズで、紫というか前作らぁらの色が空いている。といっても1年目でいきなりクロスオーバされても困る(映画で十分)わけで新キャラクタ用に使われるだろう。
... で、制作側が勝算を見出すような要素がこの中に有るかというと。。ターゲット層にとりこのゲームで疑似体験できる体験のうちもっともコアになるのはおそらく"初めて実際の人間からネットワーク越しに自分が評価される" という体験で、それを具体的なコミュニケーションなしでどうやって実在感を伴って実現できるかに鍵が有るのではないかと思う。ゲームシステム上の数値で表現される"ファン"と実際にチケットを交換した具体的な人間の間には、マジックテープでくっついた野菜を切るおもちゃと、実際に料理ができるママレンジくらいの違いはある。
なので個人的には、"本物の人間がシステムの向うにいること"にフォーカスすると予想している。従来のプリパラは"システムでーす"というセリフを話すゲームシステムを擬人化したキャラクタまで用意して、どこか不気味なまでにシステムを強調していたが、その点を180度転換するのがプリ☆チャンなのではないか。