リモコンでの操作体系を考える会
- 前回: http://d.hatena.ne.jp/mjt/20150926/p1
- ゲームプラットフォームとしてのスマートTV
現状"テレビに映るゲーム"を考える上で、リモコンを使用した操作体系を考えておく必要がある。...営業的な意味では、ゲームを買う層はゲームパッドも用意しているはずなのでどのくらい真剣に考えるべきかは何とも言えないが。。
4方向 + 1ボタン
とりあえず、ゲームに使えるのは4方向 + 1ボタンしかない。ATARI VCSかよ!
Android TVのリファレンスモデルであるところのNexus Playerのリモコンには"再生/停止"ボタンが追加されているが、Androidの互換性基準であるAndroid Compatibility Definition Document(CDD)には
Navigation. All Android Television remotes MUST include Back, Home, and Select buttons and support for D-pad events.
とあり、リモコンに含める必要のあるボタンはSelect(決定ボタン)、Back(戻るボタン)、Homeと4方向ボタンだけとなっている。アプリケーションで自由に用途を決定できるのはこのうちSelectボタンのみとなる。
実際にはAmazon Fire TVをはじめとして、もっと多くのボタンをリモコンに備えているデバイスが多いが、
- Nexus Player / Amazon Fire TV / AppleTVの各リモコン
NVIDIA SHIELDのようにリモコンに必要最低限のボタンしか無いデバイスも実在する。
一応"戻る"と"Home"は存在を期待できるが、これらをゲーム要素に使うことはできない。
- Homeはそもそもアプリケーションでのハンドルが禁止されている(PSのPSボタン、Xboxボタン同様)
- "戻る"はアプリケーションでハンドルすることはできるがアプリケーション境界を超えて戻ることが期待されているためいわゆる"Bボタン"として使用することができない
- "戻る"は咄嗟に押せる場所に無い可能性がある。例えばゲームパッドではファミコンで言うところのSELECTボタンの位置に配置されている。
さらに、リモコンは基本的に片手持ちを想定したデバイスであり、手元を見ずに操作できるボタンの限界がそもそも4方向 + 1ボタンと言える。
実際の使われ方
レースゲームであるアスファルト8(Gameloft)は、左右のステアリング、上をニトロ(ゲージ消費技)、下をブレーキ(およびドリフト)に使用している。決定ボタンはアクセルだが、アクセルには自動設定があるため使用しないこともできる。
今のところリモコンで操作できるシューティングゲームは見つけられていない。
...聖剣伝説はリモコン対応って書いてあるのに実際にはリモコンでは操作できない! (基本的に無反応、ゲームパッドを接続するとリモコンにも反応 他のアプリでも発生するのでFireTVの仕様/不具合っぽい。もっとも、リモコン上にはサブボタンが無いのでメニューを開けず、アイテムの使用は必須なのでクリアもできない(はず)。)
まぁ実際対応していたとしてもどうやって操作するんだという感は有るが。。リモコンの操作形態はかなりゲーム要素を制約するため、過去のゲームのリモコン対応は難しいだろう。
AppleTVもゲームの要件からリモコン操作を外してしまっているので、あまり現状の市場にはリモコンを使った良いゲームはなさそうだ。
ゲームデザインの基盤
ゲームデザイン上の目標は"プレーヤに適度なチャレンジを与えること"と要約できる。ゲームプレイの快適性のみを求めるのではなく、(アクションゲームとしての、)適度な緊張感を提供しなければならない。
ゲームパッド使用時と同じゲームを提供することはキッパリ諦める。これによりゲーム中の切り替えは不可能になるし、スコア等も別集計とする必要がある。一応、現状のプラットフォームでは接続されているデバイスがゲームパッドなのかリモコンなのかは識別が可能であるため、ユーザに選ばせる必要は無い。例えばChild Of EdenのようなKinect / コントローラ両対応のゲームではロックオンサイトのサイズ調整といった方法でゲームバランスを調整しているし、スコアも別集計としている。(アスファルト8はキーボードや加速度センサ含めかなり多様な操作形態を提供しているが、スコアの集計分けやコースの調整等は行っていないようだ。)
- 操作は4方向(D-pad) + 1ボタンに収める必要がある
- 現状のプラットフォームでは、ボタンDOWN/UPが個別に取れることは保証されている。つまりボタン押しの長さを取得できる。
- 以下のUI要素は使用できない:
これらの制約の中でゲームを組み立てるとすると、いわゆる"ラン系"のようなシングルボタンゲームに近い内容になるのではないだろうか。つまり、
- タイミング良く "上" "下" "左" "右" "決定" の5ボタンのいずれかを押すゲーム
として、UIを組み立てていく必要がある。
レール感の軽減策
今回のゲームは(既存のスマホ風ゲームとの差別化を企図して)フリーローミングなバトルの実現に重きを置いている。このため、単純にゲームをレールシューターに置き換えることは避けたい。
基本的なゲームイメージは、空中を飛んで敵をロックオンサイトに収め、攻撃ボタンを押して撃墜するというフローになる。
これをリモコンで再現することを考えると、最も論理的なのはレールシューターにしてしまい、リモコン操作はロックオンサイトの上下左右移動 + 攻撃に割り当てることになる。しかし、これだとゲームパッド版のゲームと相当に違う内容になってしまう。
限られたボタンを活かしつつ、かつ、キャラクタを操作している感覚を得られるようにゲームプレイを構築するならば:
- キャラクタの状態を"停止/ローミング"(移動対象選択)、"滑走/飛行"(自発移動)、"受け身"(受動的な移動)に分け、それぞれで異なる操作を割り当てる
- 更にロックオンの状態を"ロック無し"、"単体ロックオン"(ブレード等近接武器攻撃)、"マルチロックオン"(投擲/射撃武器攻撃)に分割する
- 攻撃の回避にロックオンを要求する - 敵弾への攻撃は迎撃または回避のいずれかの行動となる
ステージや敵キャラクタの設計に最も影響する点は、攻撃対象の選択に左右しか使用できない点と言える。つまり、ロックオン可能なオブジェクトは横一列に並んでいる必要があり、上下位置が揃った攻撃を出さないように配慮する必要がある。(例えば、縦方向は複数のターゲットを1体としてロックオンしてしまうという方法もある -- 設定上武器がブレードなのでこのような仕様も違和感なく処理できる)
例えば停止状態であれば、
操作 | 行動 |
---|---|
↑ダブルタップ | ダッシュ/飛行、ロックオン攻撃の回避 |
↑ | ターゲットを注目(視点移動) |
←→ | ターゲット選択 |
↓短押し | ターゲットマーカー無効 |
↓長押し | ロックオン全解除 |
↓ダブルタップ | クイックターン + ロックオン解除 |
決定 | ショット(ロックオンのある場合)、攻撃の回避(いわゆるジャストガード) |
ターゲットは基本的にスナップ移動、つまり最も近いターゲットを一瞬で選択する。自由移動を実現するために、↓短押しによってこのスナップ挙動を無効化させる。
↑↓にはダブルタップによる機能を組み込んでいる。このため、シングルタップでの行動はダブルタップの行動と矛盾しないように配慮する必要がある。↑シングルタップが視点移動であるため、飛行は必ず視界中央に対して行われることになる。(決定ボタンで回避行動を取る場合は例外)
滑走中/飛行中は、
操作 | 行動 |
---|---|
↑ | 飛行に移行(滑走中) |
←→ | 旋回 |
←→ダブルタップ | 高速旋回 |
↓ | 降下/滑走に移行(飛行中) |
決定 | ショット、攻撃の回避 |
飛行中はスナップではなく通常の移動となる(腰溜め撃ちのような射撃性能低下を表現している)。
とにかく状態が複雑なので、HUDを相当に工夫しないと上手く操作できないうちに被弾して死ぬことになる。長押しのビジュアルフィードバックや、上下を移動に使用できないことを表現するためのサイト形状等がポイントになりそうだ。