"子ども表現"とシナリオ


子どもとゲームシナリオの問題は非常に難しい。

現実の子どもの問題

人生80年なのに、実際の規制は子ども側に集中している。例えばCEROのレーティングは:

  • (規制なし)(A/教育〜)
  • 12才以上推奨(B)
  • 15才以上推奨(C)
  • 17才以上推奨(D)
  • 18才未満禁止(Z)

の5段階有る。Dとか必要性が疑問だけど(例えば韓国には無い)、だいたいのレーティング機構は17才付近で(業界的な)強制力のある一線を引いている。Zは広告が打てないとか量販店に置けない等の規制がある。
よく引用されるシンプルでわかりやすい例: 生身の人間の切断面が映るゲームはZ指定になる。というわけで、刀を振るゲームの敵キャラクタはロボットにしないといけない。大作ゲーム/ネットワーク販売のゲームをZ指定で売り抜けるのは非常に困難なため、ゲームに人間が出るならゲームを企画する段階から意識することになる。
この規制は一般的なTV番組よりも厳しい。インタラクティブでないTV番組と、インタラクティブなゲームの規制内容が同じであるべきとは思わないけど、規制内容が違うことは認識する必要がある。
もう一つ、ゲームを実際の子どもにプレイして欲しいなら、全年齢対象にしないといけない。これはもう全方面に気を配らないと実現できない。暗示的な表現でもダメ、下着が見えてもダメ、ギャンブル要素は控えめに。
...きせっこぐるみぃは下着が見えるけど( http://www.kabu-p.com/co/a-80.html )全年齢対象だ。ただ、きせっこ〜の場合も、下着姿のままではフィールドに出ることはできないようになっている。そりゃまぁ実際に"セクシャル"指定されるような内容とも思わないけど。
最近はバーチャルコンソールゲームアーカイブスの形で昔のゲームが再販されるので、過去のゲームにCEROレーティングが付与されている。この、過去のゲームを現在の基準で測る試みは興味深い。魂斗羅スピリッツは全年齢対象だが、パイロットウイングスCERO Bとなっている。
TVでは昔の映画を"表現のオリジナリティを尊重して"そのまま放映することが行われるが、ゲームではだいたい規制ないし修正される。これもTVとゲームの違いで、別に1986年の子どもが遊べたものを2012年の子どもがそのまま遊べるべきだとは思わない。文化は変わる。それでも今の小学生はロマサガ3を遊べないというのは地味に衝撃的な事実な気もする。

シナリオ中の子どもの商品性

こっち(= 非実在の子ども)はゲームに限らない問題で、時代・地域で子どもに対する扱いは本当に全然違う。
ゲーム..は元より、映画でも子どもを主人公やテーマにするような作品は(日本と比較して)あまり人気がない。"日本"アカデミー賞のアニメ賞は、どれも人間の子どもがテーマになった作品だが、(本家)アカデミー賞のアニメ賞は大抵動物やロボット、オッサンである。
平たく言えば、日本以外では一般に子どもは商品性が低い。ハリー・ポッターのような非常に強力な例外は有るが、少なくとも子どもを出しておけば売れるという性質はどこにもない。
表現に対するレギュレーションも本当に様々で、シナリオの商品性を最大化したいなら、単純に避けるしか無いように思える。
で、↑みたいなキャラクタを設定したとする。ウサギ耳の亜人で、"飼育され係"のギャグから識別用の首輪を着けていて、他の子どもと一緒に学校に通う。
設定がどんなに狂っていても、レーティング基準は冷徹に作用する。要するに、↑のように2足で歩いていて機械でなければ人間扱いで、"見た目が"子どもなら人間の子どもの基準になる。"18才以上"とか"20才以上"みたいな断り書きを入れたらどうなるのかは気になるところだけど、そういう主張を(TVゲームでは)見たことが無いのでなんとも言えない。
レーティングが取るに足らない問題であっても、文化的に受け入れられるかは別で、例えば そもそも飼育係って日本以外にも存在するのか とか 首輪自体が違法の国はないかといった疑問を埋めていく必要がある。(実際には、教室にペットを置くのは諸外国でも見られないわけではないが、基準を満たさない首輪には飼い主に対して罰金等を課している国もある。)
比較論だと、日本は諸外国に比べて子どもの立場が低い - もちろんゲーム中の表現という意味で。
例えばMother2には、遅くに帰ってきた子ども(ポーキー)を父親が叩くシーンがあるが、海外版では多少マイルドになっている( http://www.youtube.com/watch?v=azBNcavUixk )。(Mother2の翻訳はゲームの日→英の翻訳としてはかなり質が高く参考になる。詳細に比較したサイト: http://earthboundcentral.com/m2eb/ )
まぁ、このへんの違いを完全に無視して、"日本流の子ども観"でシナリオを積み上げても良いとは思うけど、他所の国で子どもがどう扱われているのかを知るのは、常識を疑ういい機会だと思う。